雨の裏庭

掌編未満のSSや思いついたシーンなどを気ままに書き散らしていくためのブログです。

 たまたまファイルを発見したので没ネタ救済~。第二部第二章File-2後半、ジュリアン視点バージョンです。


「最後のイメージは全て見覚えのないものだったんだな?」
 話し終えたフィラに確認する。
「はい。全部、ユリンではなかったと思います。空の色も夢の中と同じで変な灰色だったし……」
「そうか……」
 魔女はフィラに「真実を見せる」と言った。今回の件がカルマの干渉だとしたら、彼女の目的は何なのか。フィラの魔力に興味があるのなら、「真実」など見せる必要はないはずだ。
「以前、幽霊を見かけたと話していたな。魔女の容貌はその幽霊と一致していたか?」
 他に理由があるのなら知っておく必要があるが、あまりにも情報が少ない。接点の少ないフィラとカルマを結びつける要素を一つでも多く知りたかった。
「はい、一致している、と思います。それと、私、実はあの後も何度か魔女を見かけているんです」
「そのときの状況も教えてくれ」
 フィラは緊張した様子で少し考えた後、ようやく口を開いた。
「二度目に見たのはフィアの歓迎パーティーの日です。そのときも魔女は私に何か言おうとしていたみたいなんですけど、その前に『危ないよ』って声が聞こえて、すぐに転移してしまったから……何を言おうとしていたのかは、よく、わからないんですけど」
「危険を告げた声に聞き覚えは?」
「それもよく……声が小さすぎてわかりませんでした」
 恐縮するフィラに、気にせず話を続けろとジュリアンは先を促す。
「三回目は夜中です。窓の外に姿が見えて……でも、そのときはウィンドさんかもしれないと思ってました。それで、四回目、は……」
 フィラが不自然に言葉を切った。俯いたフィラが何を思い悩んでいるのかはわからないが、待ってみようとジュリアンは思う。今のフィラは出来る限り誠実にこちらの質問に答えているように見えた。ならば恐らく、彼女の判断を信じる方が得策だ。
「……四回目は、八月の最後の日、です」
 さんざん迷った末に、フィラは日付だけを口にした。その日付の意味を考えて、ジュリアンは固まる。それは水の神器と部下を失ってユリンに戻ってきたあの日の日付だ。ちらりとフィラを見下ろせば、固まってしまったジュリアンを見て心配そうに両手を握りしめていた。舌打ちしたい気分になる。これでは立場が逆だ。心配されてどうする。
「その時の様子は話せるか?」
 努めていつも通りの調子で尋ねる。平静を装うのにはどうにか成功したようで、フィラの雰囲気が少しだけほっとしたように緩んだ。
「あの時……私は、礼拝堂にいて……ぼんやり、してたんですけど」
 それでも言葉を選んでつっかえつっかえのフィラは、やはり非常に話しにくそうだ。
「気にせず話せ。どうせここには俺しかいない」
 あの日の自分を殴りに行きたいと割と本気で考えながら、ジュリアンは両腕を組んで仏頂面で言い放つ。いくら精神的にも肉体的にも弱っていたからといっても、あんなことをするべきではなかった。あんな――何も知らない少女に甘えるような真似を。わかりきっていたことなのに、なぜ自分を制御できなかったのだろう。
「……すみません。魔女がどこから入ってきたのかはわからないんです。気がついたら目の前にいて……」
「何か言われたのか?」
「確か……私は『風』だって」
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