雨の裏庭

掌編未満のSSや思いついたシーンなどを気ままに書き散らしていくためのブログです。

キャラクター名:ワルツ
種族:タビット [特徴:第六感]
生まれ:魔術師

■パーソナルデータ・経歴■
年齢:不明
性別:女(?)
髪の色:白 / 瞳の色:黒 / 肌の色:白
身長:92
体重:25
経歴1:
経歴2:
経歴3:
穢れ度:0

■能力値■
     技     体     心
基礎   6     5     11
   器用 敏捷 筋力 生命 知力 精神
A~F  5  6  2  3  18  10
成長  1           →計:1
修正           
=合計= 12  12  7  8  29  21
ボーナス 2  2  1  1  4  3

   生命 精神
   抵抗 抵抗  HP  MP
基本  3  5  14  30
特技        0  0
修正       
=合計= 3  5  14  30

■レベル・技能■
冒険者レベル:2 Lv

ファイター     0 Lv / マギテック  0 Lv
グラップラー     0 Lv / スカウト   0 Lv
フェンサー     0 Lv / レンジャー  0 Lv
シューター      0 Lv / セージ    1 Lv
ソーサラー     2 Lv / エンハンサー  0 Lv
コンジャラー     1 Lv / バード    0 Lv
プリースト     0 Lv / ライダー   0 Lv
フェアリーテイマー 0 Lv / アルケミスト  0 Lv
デーモンルーラー  0 Lv / ミスティック  0 Lv
ウォーリーダー    0 Lv


■戦闘特技・値■
[参照] 特技名 : 効果 : 前提
[p223]魔法誘導 : 射撃魔法で誤射しない、完全に隠れ切れてない対象に射撃魔法可能 :


   魔物       全力
   知識 先制 移動 移動
基本  5  2 12  36
修正     
特技        0
=合計= 5  0 12m  36m

■呪歌・練技・騎芸・賦術・鼓咆・占瞳■

[参照] 特技名: 効果: 前提
[p] : :



■装備■
・基本命中力、追加ダメージ、基本回避力
       Lv 命中 追ダメ 回避
ファイター :      
グラップラー:      
フェンサー :      
シューター :      

・武器
価格 用法 必筋 修正 命中 威力 C値 追ダメ [カテゴリ・ランク] 名称(*:装備している) / 備考 (参照)
               [] / (p)

=価格合計= 0 G

・防具
   必筋 回避 防護  価格  名称 / 備考
鎧 : 7    3  150 ソフトレザー /
盾 : 1  1    60 バックラー /
修正:     
= 合計 =   1  3  210 G
(回避技能:)

・装飾品
   価格 名称 / 効果
頭 :   /
耳 :   /
顔 :   /
首 :   /
背中:   /
右手:   /
左手: 100 魔法の発動体 /
腰 :   /
足 :   /
他 :   /

=合計=100 G

■所持品■

名称  単価 個数 価格 備考
ピンクのポンチョ  100  1  100 フード付き
ヒーリングポーション  100  2  200 HPを即座に回復するポーション。戦闘中自分にのみ使用可。
魔香草  100  2  200 MPを回復する薬草。戦闘中使用不可。
救命草  30  5  150 HPを回復する薬草。戦闘中使用不可。

=所持品合計=   650 G
=装備合計=    310 G
= 価格総計 =   960 G

所持金   240G
預金・借金 G

■言語■
      話 読           話 読
共通交易語 ○ ○ / 巨人語      - -
エルフ語  ○ - / ドラゴン語    - -
ドワーフ語 - - / ドレイク語    - -
神紀文明語 - ○ / 汎用蛮族語    - -
魔動機文明語- - / 魔神語      - -
魔法文明語 ○ ○ / 妖魔語      - -
妖精語   - - / グラスランナー語 - -

・地方語、各種族語
    話 読 名称
[] - - 

初期習得言語:交易交通語、神紀文明語
技能習得言語:魔法文明語、1個の会話or読文

■名誉アイテム■
点数 名称
 
 
 

所持名誉点: 11 点
合計名誉点: 11 点

■その他■
経験点:690点 (使用経験点:3500点、獲得経験点:1190点)
セッション回数:1回
成長能力 獲得経験点(達成/ボーナス/ピンゾロ) メモ
1- 器用度   1190点(1000 / 190 / 0回)  
2-   0点( / / 回)  
3-   0点( / / 回)  

メモ:
 良く出来た白兎の着ぐるみ。闇そのもののような見透かすことの出来ない瞳を持つ。正体は不明。リラに光の翼を探せと予言した張本人。
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キャラクター名:シリウス
種族:ドレイク [特徴:暗視/限定竜化/光ブレス/弱点(魔法+2)]
生まれ:戦士

■パーソナルデータ・経歴■
年齢:21
性別:男
髪の色:銀 / 瞳の色:青 / 肌の色:白
身長:185
体重:67
経歴1:命を救われたことがある
経歴2:忘れられない恐怖を体験したことがある
経歴3:故郷の場所を知らない
穢れ度:3

■能力値■
     技     体     心
基礎   12     14     4
   器用 敏捷 筋力 生命 知力 精神
A~F  5  6  10  4  14  7
成長    1         →計:1
修正           
=合計= 17  19  24  18  18  11
ボーナス 2  3  4  3  3  1

   生命 精神
   抵抗 抵抗  HP  MP
基本  5  3  24  14
特技        0  0
修正       
=合計= 5  3  24  14

■レベル・技能■
冒険者レベル:2 Lv

ファイター     2 Lv / マギテック  1 Lv
グラップラー     0 Lv / スカウト   0 Lv
フェンサー     0 Lv / レンジャー  0 Lv
シューター      0 Lv / セージ    1 Lv
ソーサラー     0 Lv / エンハンサー  1 Lv
コンジャラー     0 Lv / バード    0 Lv
プリースト     0 Lv / ライダー   0 Lv
フェアリーテイマー 0 Lv / アルケミスト  0 Lv
デーモンルーラー  0 Lv / ミスティック  0 Lv
ウォーリーダー    0 Lv


■戦闘特技・値■
[参照] 特技名: 効果 : 前提
[p224]かばう : 1Rに1回1PCをかばう、自動命中となる :


   魔物       全力
   知識 先制 移動 移動
基本  4  3 19  57
修正     
特技        0
=合計= 4  0 19m  57m

■呪歌・練技・騎芸・賦術・鼓咆・占瞳■

[参照] 特技名 : 効果 : 前提
[pII74]キャッツアイ : 命中判定+1 : 1



■装備■
・基本命中力、追加ダメージ、基本回避力
       Lv 命中 追ダメ 回避
ファイター : 2  4  6  5
グラップラー:      
フェンサー :      
シューター :      

・武器
価格 用法 必筋 修正 命中 威力 C値 追ダメ [カテゴリ・ランク] 名称(*:装備している) / 備考 (参照)
560 1H両  17    4  17  10  6 [ソードB] *バスタードソード / (232p)
0  2H  17    4  27  10  6 [ソードB] バスタードソード / (232p)

=価格合計= 560 G

・防具
   必筋 回避 防護  価格  名称 / 備考
鎧 : 15    5  520 スプリントアーマー /
盾 : 17    2  100 タワーシールド /
修正:     
= 合計 =   5  7  620 G
(回避技能:ファイター)

・装飾品
   価格 名称 / 効果
頭 :   /
耳 :   /
顔 :   /
首 :   /
背中:   /
右手: 200 マギスフィア /
左手:   /
腰 :   /
足 :   /
他 :   /

=合計=200 G

■所持品■

名称 単価 個数 価格 備考
   1  0 
   1  0 
   1  0 
   1  0 

=所持品合計=   0 G
=装備合計=    1380 G
= 価格総計 =   1380 G

所持金   0G
預金・借金 -80G

■言語■
      話 読           話 読
共通交易語 ○ ○ / 巨人語      - -
エルフ語  - - / ドラゴン語    - -
ドワーフ語 - - / ドレイク語    ○ ○
神紀文明語 - - / 汎用蛮族語    ○ ○
魔動機文明語○ ○ / 魔神語      ○ -
魔法文明語 - - / 妖魔語      - -
妖精語   - - / グラスランナー語 - -

・地方語、各種族語
    話 読 名称
[] - - 

初期習得言語:交易交通語、ドレイク語、汎用蛮族語
技能習得言語:魔動機文明語、1個の会話or読文

■名誉アイテム■
点数 名称
 
 
 

所持名誉点: 11 点
合計名誉点: 11 点

■その他■
経験点:190点 (使用経験点:4000点、獲得経験点:1190点)
セッション回数:1回
成長能力 獲得経験点(達成/ボーナス/ピンゾロ) メモ
1- 敏捷度   1190点(1000 / 190 / 0回)  
2-   0点( / / 回)  
3-   0点( / / 回)  

メモ:
 銀髪長髪を一つ結び。冷ややかな氷色の瞳。竜化時は赤い瞳。戦闘時にも時折目が赤くなる。半人半竜。実験体として生み出されたので自分でも寿命がどれくらいあるのかわからない。とりあえず年は取らない。冷静で冷徹。人間に対してはあまり良い感情を抱いていない。
キャラクター名:リラ
種族:人間 [特徴:剣の加護/運命変転]
生まれ:神官

■パーソナルデータ・経歴■
年齢:17
性別:女
髪の色:金 / 瞳の色:青 / 肌の色:白
身長:162
体重:50
経歴1:過去の記憶がない
経歴2:予知夢を見たことがある
経歴3:大けがをしたことがある
穢れ度:0

■能力値■
     技     体     心
基礎   5     6     10
   器用 敏捷 筋力 生命 知力 精神
A~F  10  8  4  3  12  9
成長            1 →計:1
修正           
=合計= 15  13  10  9  22  20
ボーナス 2  2  1  1  3  3

   生命 精神
   抵抗 抵抗  HP  MP
基本  4  6  18  29
特技        0  0
修正       
=合計= 4  6  18  29

■レベル・技能■
冒険者レベル:3 Lv

ファイター     0 Lv / マギテック  0 Lv
グラップラー     0 Lv / スカウト   0 Lv
フェンサー     0 Lv / レンジャー  0 Lv
シューター      0 Lv / セージ    0 Lv
ソーサラー     0 Lv / エンハンサー  0 Lv
コンジャラー     0 Lv / バード    1 Lv
プリースト     3 Lv / ライダー   0 Lv
フェアリーテイマー 0 Lv / アルケミスト  0 Lv
デーモンルーラー  0 Lv / ミスティック  0 Lv
ウォーリーダー    0 Lv


■戦闘特技・値■
[参照] 特技名 : 効果 : 前提
[p226]魔法拡大/数 : 対象を拡大するごとにMP倍増、達成値は個別 :
[p227]魔法拡大/時間 : 効果時間を倍増した分MPも倍増 :


   魔物       全力
   知識 先制 移動 移動
基本  0  2 13  39
修正     
特技        0
=合計= 0  0 13m  39m

■呪歌・練技・騎芸・賦術・鼓咆・占瞳■

[参照] 特技名 : 効果 : 前提
[pII84]ヒーリング : 10分に1点HP回復 : 18R



■装備■
・基本命中力、追加ダメージ、基本回避力
       Lv 命中 追ダメ 回避
ファイター :      
グラップラー:      
フェンサー :      
シューター :      

・武器
価格 用法 必筋 修正 命中 威力 C値 追ダメ [カテゴリ・ランク] 名称(*:装備している) / 備考 (参照)
               [] / (p)

=価格合計= 0 G

・防具
   必筋 回避 防護  価格  名称 / 備考
鎧 : 7    3  150 ソフトレザー /
盾 : 8    1  100 ラウンドシールド /
修正:     
= 合計 =   0  4  250 G
(回避技能:)

・装飾品
   価格 名称 / 効果
頭 :   /
耳 :   /
顔 :   /
首 : 100 聖印 /
背中:   /
右手:   /
左手:   /
腰 :   /
足 :   /
他 :   /

=合計=100 G

■所持品■

名称  単価 個数 価格 備考
冒険者セット  100  1  100 
手鏡  50  1  50 
魔香草  100  3  300 
ヒーリングポーション  100  3  300 
魔晶石2点  200  1  200 

=所持品合計=   950 G
=装備合計=    350 G
= 価格総計 =   1300 G

所持金   220G
預金・借金 80G

■言語■
      話 読           話 読
共通交易語 ○ ○ / 巨人語      - -
エルフ語  ○ - / ドラゴン語    - -
ドワーフ語 - - / ドレイク語    - -
神紀文明語 - - / 汎用蛮族語    - -
魔動機文明語- - / 魔神語      - -
魔法文明語 - - / 妖魔語      - -
妖精語   - - / グラスランナー語 - -

・地方語、各種族語
    話 読 名称
[] ○ ○ (任意)

初期習得言語:交易交通語、地方語
技能習得言語:1個の会話

■名誉アイテム■
点数 名称
11 
 
 

所持名誉点: -11 点
合計名誉点: 0 点

■その他■
経験点:240点 (使用経験点:4000点、獲得経験点:1240点)
セッション回数:1回
成長能力 獲得経験点(達成/ボーナス/ピンゾロ) メモ
1- 精神力   1240点(1000 / 190 / 1回)  
2-   0点( / / 回)  
3-   0点( / / 回)  

メモ:
 太陽のような金髪に青空のような瞳。癒やしの力を持つ謎の少女。過去の記憶がなくワルツから聞いた「お前は光の神。光の翼を探せ」という予言に従って研究塔を目指す。音楽が好きで、行く先々で音楽関係の資料を発掘したり記録を残したりしている。予言は行動の指針にしてはいるものの、信じてはいない。ややうっとうしく感じられるほど楽天的。
 2000年8月13日(日)

 眠い。

 今は昼間だ。外は真夏の太陽が容赦なく照り付けている。吸血鬼だけでなく、普通の人間すらも敬遠するだろう真夏の太陽。
 しかし天使は違うらしい。
「お前、よくそんなところでじっとしていられるな」
 タナトスは窓辺の天使に呼びかける。照りつける太陽を全身に浴びて、それでも天使は汗一つかかない。彼女はさっきから一心に、真っ白な――けれど彼女自身よりはいくらか黄色がかった――ギターのチューニングを続けている。
 天使がタナトスの住んでいる教会に訪ねてきたのは、正午を少し過ぎた頃だった。今日は路上ギター仲間が模擬試験なので、夕方まで暇だという。そして彼女は小さな応接室の窓辺に腰を落ち着け、ギターを取り出し、弦を張り替え始めた。
 ギターが天使と同じくらい光に強いとはちょっと思えない。こんなにも情け容赦のない白日の下にさらしていて良いものなのか、いささか疑問だ。だがあのギターは自分の持ち物ではない。したがってタナトスが心配してやる義理もない。もしかしたらあのギターは、天使と同じように光に強い特別製なのかもしれない。
「暑くないのか?」
「あなたは暑い?」
 チューニングを淡々と続けながら、天使はゆっくりと尋ね返す。
「死体は暑さなんて感じない」
 憮然として答えると、天使は小さく笑った。光の中で肩とギターが揺れる。
「なら、幻も暑さなんて感じない」
 何がおかしくて彼女が笑っているのか、タナトスにはわからない。
「何がおかしいんだ?」
 チューニング・ペグのいくつかが、順に光を反射して天井に奇妙な模様を躍らせる。
「何が、おかしいんだろう?」
 天使は笑い続ける。
「私の中の何が、おかしいと感じているんだろう?」
 わからないまま、笑い続ける。
 見つめながらタナトスは思う。

 眠い。

 考えることはいろいろあるような気がするのだ。
 たとえば何故天使が笑っているのかとか。
 自分の中の何が眠いと感じているのかとか。とうに働きを止めたはずの精神機能が眠いと感じるのは実は驚くべきことなんじゃないのかとか。幻にも精神機能はあるのかとか。ないとしたら何故彼女は笑うことができるのか、とか。
 こんな厄介な女に寝顔を見せるなんて冗談じゃないとか。
 でも眠い。何も、考えたくない。
「眠い」
 うんざりと呟くと、天使は微かに視線を上げて頷いた。
「寝てて良いよ。夕方になったら起こすから」
 タナトスはカーテンが作る影の中で目を閉じる。天使は光の中で笑い続ける。
 同じように生きられなくても、同じ時間を共有できるのはなんだか妙な感じだ。
 ギターのチューニングの、単調な音が耳を撫でる。

 眠い。
 2000年10月2日(月)

 間違えて学校へ来てしまったときの、このむなしさといったらどうだろう。

 学校へ来て鞄を置いて教室を見回して思い出した。今日は開校記念日だって。自転車置き場で気が付くべきだったんだ。いくらこの学校の生徒にはぎりぎりに来る人が多いからって、授業開始二十分前に自転車が全然無いなんてありえないって。
 深く深くため息をつく。間違えて学校来ちゃったよーなんて友達にメールしたら、馬鹿にされるのがわかりきっているのでしない。仕方ないからトイレに行ってから家へ帰ってもう一眠りしようと思う。それにしても、昨日先生から何の連絡もないってどういうこと? 朝の会も帰りの会もないから仕方ないのかもしんないけど、こういう情報が噂でしか入ってこないなんて何か間違ってる。学年の始めに配られたプリントなんて、んな長々となくさないでられるかっての。もう家のどこにも見あたらないよ、探したって。
 まあ、それにしたってうかつだったな、とは思うけど。

 トイレの鏡は小さかったから、廊下に張られた鏡の前で軽く前髪を直す。鞄から手鏡を取り出し、合わせ鏡で後ろ髪も。
 そのとき不意に、私の背後から男の人の声がした。
「こんにちは、お嬢さん」
 ものすごぅくうさんくさい声のかけ方だった。
「こ……こんにちは」
 振り向いてみれば、映画の中でしかお目にかかれないような整った顔の美形が立っていた。銀髪碧眼。外国人だ。あんまりアメリカンな押しの強い感じがしないから、ヨーロッパの方の人かも。英語の講師だろうか。でも、こんな先生見かけたことない。
 ……それにしても、さっきの声のかけ方。やっぱり外国の人にとっては「ボンジュール、マドモワゼル」レベルに普通の声のかけ方なのかなあ。その台詞で連想できるのは、小柄で禿げ上がった某探偵の顔と吹き替えの声だけなんだけど。っていうか、それフランス語じゃん。普通の公立校のうちにフランス語の講師なんか必要ないって。
「今日は学校は休みだよ」
「ええと、もう知ってます」
 さっきまでは知らなかったんだけど、それはもう過去の話だ。
「そう? だったらいいんだけど」
 銀髪美形はにっこり笑いながら顔を上げて、ふと鏡の中を見た。鏡の中には、私の手鏡が無数に連なって映っている。合わせ鏡にしたままだったんだ。その鏡の列を指して、銀髪美形は小首を傾げた。
「ところで君は、この鏡の列がどこまで続くか考えたことがあるかい?」
「……ええと……」
 何この話運び。ついて行けないんですけど。私が鈍いのか? いや、これは絶対この人がおかしいんだ。惜しいなあ、こんなに美形なのに変人だなんて。ていうか、変人だったらまだいいけど、まさか変態ってことはないよね? だったら私、大ピンチじゃん。ヤバ、隙を見て逃げ出さなきゃ。
「どこまでも、じゃないっすか?」
 逆切れされたら大変なので、とりあえず話を合わせてみる。
「つまり、無限だと?」
 銀髪美形の瞳がきらりと光ったような気がした。何? もしかして本格的にヤバイ感じ? 逃げる隙を探してるのに、そういうのが全然ない。やっぱピンチかもしんない、私。
「ええと……そうなんじゃないですか?」
 なんだこの人、という不審の念もあらわに眉根を寄せてみたのに、不審な男はにこやかな表情を崩さなかった。もちろん隙も出来なかった。段々危機感が大きくなってくる。マジそっち系の人だったらどうしよう。つーかどうなってんのこの学校の警備……って、普段の様子を見てればだいたいわかるけどさ。もうちょっとなんか考えた方がいいんじゃないの? 最近物騒なんだし。
「まあ、数学的にはそうなんだろうけどね」
 私の内心の葛藤になんて気付くはずもなく、銀髪美形は穏やかな調子で話し続ける。話してる感じは普通の人っぽい。日本語の発音完璧。日本語だけなら私の方がよっぽどヤバい自信ある。だけど、油断は禁物だ。ホントに最近いろいろ物騒なんだから。
「現実の問題として考えると、像の大きさが光の波長程度になった時点で形を成さなくなる。従って永遠ではない」
 ぐるぐる考えていた私は、ふと思考を止めて銀髪美形の顔を見上げた。
「……そう、なんですか?」
 純粋に、おどろいた。一応物理の授業を取ってるから、光の波長、っていうのはわからなくもない。光っていうのは要するに波だから、波の大きさより像が小さくなっちゃったらもうそれを「見る」ことはできなくなっちゃうんだ。
「……そっか。永遠じゃないんだ」
「そうなんですとも」
 銀髪美形は笑顔で頷いた。
「それじゃ、呼び止めて悪かったね。今日は学校は休みだって、さっきも話したけれど、ひと気がないから、ここはあまり安全な場所じゃない。早く帰ったほうが良いよ」
「あ、そうですね。……どうも」
 銀髪美形がえらく常識的な結論を出してくれたので、私は心底ほっとして頭を下げる。
「うん。それじゃ、気をつけて」
 軽く手を振って背を向けた銀髪美形を見送って、もう一度鏡を振り返ってぞっとした。振り返った鏡には、私しか映っていなかったのだ。銀髪男はまだ、角を曲がっていなかったのに。
 何度か振り返って振り返って鏡の中と外を見比べて、私は天を仰いだ。
 そっち系なのは私の方か。
 もうだめだ。幻覚見えてるんだ。帰って寝よう。
 ちくしょう、明日あたり、サエに変な夢見ちゃったって自慢してやる。あいつこういう話大好きだったよな、確か。
 2000年4月5日(水)

 夜中から降り始めた雨はまだ止んでいなかった。引越し先までの街道に並んだ桜は満開で、三月の末に開花宣言を出されたソメイヨシノは灰色の空に浮かび上がるように咲いていた。街道を通る車の交通量は多く、ゆったりとした二車線をひっきりなしに行き交っている。
 街道から細い路地に入り、いくつか角を曲がって行き着いた住宅街は、それと比べるとかなり閑静なたたずまいを見せていた。比較的裕福な中流家庭のものだろう、小さくて清潔な一軒家が立ち並ぶ。
 引越しの荷物を積んだ軽トラックは、三階建てのアパートの前で停車した。築五年ほどだろうか、ブルーグレーのタイルで覆われた、賃貸アパートにしては近代的なデザインの建築物だった。周りが二階建てばかりなせいでアパートの最上階は周囲から少し飛び出していて、ずいぶん眺めが良さそうだ。
 アパートの前では、Tシャツとジャージを着て、肩下十センチほどの真っ直ぐで色素の薄い髪を二つに結わえた少女が待っていた。美人かかわいいかは評価が分かれるところだろう。子どもから大人への過渡期に特有の容貌は、表情や仕種でもだいぶ印象が変わる。今は服装や髪型のせいもあって、ややかわいい寄りだ。彼女はにこやかに手を振って軽トラックを迎える。
「おはよう。朝からご苦労様」
「そっちこそ、わざわざ出迎えありがとう」
 助手席から降り立った少年――透夜――は、少女に微笑を返して頷いた。少女はアパートの大家の娘で、かつ透夜の幼馴染でもある水橋透子だ。透夜と同い年で、誕生日はまだだから十六歳、今年で高校二年生になる。
「ありがとうね、透子ちゃん。せっかくの休みなのに、引越しの手伝いなんて」
 運転席から降りた透夜の母親が、回りこんできて透子の頭をなでる。
「困ったときはお互い様ですから」
 透子はくすぐったそうに笑った。
「それじゃ、今日はよろしくね」
「はい。水橋一家、微力ながら協力させていただきます」
 透子はおどけて深々と頭を下げる。
「ごめんなさいね、せっかくの休日なのに。この子、昼間は使えないから」
 母親の静(しず)は、だいぶ前に自分より高い位置になってしまった透夜の頭を、軽く小突いて苦笑した。
「仕方ないよね?」
 透子が小さく笑う。
「そう、仕方ないんだよ。でも今日は割と働けると思うな。この天気だから」
 透夜はそう答えて笑い返した。
「良かったよね、晴れてなくて」
 透子と透夜は、力なく降りそそぐ雨を一瞬見上げてから顔を見合わせてまた笑い合う。
「じゃあ、私、父さん達を呼んで来ますね」
 透子は踵を返し、アパートの中へ駆けていった。

「う~ん、やっぱりこの子の配置が決まらないのよね」
 静は巨大なスピーカーの上にぬいぐるみやら小物やらを並べてはうなっている。
「……母さん、サボってないで手伝ってくれないかな」
 ダンボールを二つ抱えて三階まで上ってきた透夜は、その様子を見て少しだけ不機嫌になる。
「失礼ね、サボってなんかないわよ」
 見なさいこれを、と、静は居間の真ん中に仁王立ちした。
 フローリングの床には三メートル四方のカーペット。その上に丈の低いテーブル。カーテンと同じ淡い藤色のテーブルクロス。薄いグリーンのソファ。壁際にはやっぱり丈の低い戸棚と引き出し。
 家具の背丈が低いので、部屋は広々として見える。一番場所をとっているのは、静が趣味で買った巨大なスピーカーだ。
「良いこと透夜? 私はちゃんとこれらの家具を配置したの。サボってなんかいないの。了解? わかった?」
「……実際に家具を動かしてたのは水橋さんだった気がするんだけど……」
 どことなくげっそりと反論すると、静はまあ気にするんじゃないわよおほほほほとか笑って手を振った。透夜はため息混じりにかがみこんで、運び上げてきたダンボールを床に下ろす。
「私これから香苗(かなえ)ちゃんとお茶にするけど、透夜はどうする?」
 この話はもうおしまいとばかりに声の調子を切り替えた静に、透夜は視線だけを向けて軽く首を振った。
「まだ部屋の片づけが終わってないから」
「あらそう。じゃあ、ちょっと行ってくるわね」
「いってらっしゃい」
 香苗――透子の母――は、ひと通り大きな荷物を運び終わったところでおやつの準備をしに一階の自宅に戻っていた。静と香苗は高校時代からの大親友なのだそうだが、これから当時をしのんでそれこそ女子高生よろしく延々と話し続けるのだろう。――あまり同席したいとは思わない。

 一番重いダンボールを開け、参考書や辞書の類を本棚に並び終えたところで、玄関のドアをノックする音が聞こえた。鍵が開けっ放しになっていたドアを開けると、そこには透子が立っていた。
「差し入れ。鉄粉入りの水」
 両手に持ったお盆にはコップが二つにストローが二本、それと台拭き。中身は片方が透明で、もう片方は琥珀色。どちらにも氷が二つ浮んでいる。
「ああ、ありがと」
 お盆を透子から受け取り、今のテーブルまで運ぶ。
「前から聞きたかったんだけど、鉄粉入り、本当に美味しいって思うの?」
 透夜について今に入ってきた透子は、ソファに腰掛けながら首をかしげた。
「うん。水だけだと味気なくてさ。喉の渇きが取れないんだよね。まあ、匂い付けって言うか、気分の問題なんだけど」
「そっか。私だったらそんな鉄の味する水飲めないよ。やっぱり味覚違うのかな?」
「違うんじゃないかな」
 頷いて水を一口。
「食事は普通に出来るのにね」
 ストローでアイスティーをかき混ぜながら透子はつぶやく。
「うん。でも、あんまり美味しいって思うことない。かも」
「やっぱり半吸血鬼も料理より生血の方が良いんだ?」
「そう、新鮮な奴。美女ならなお良し」
「……生々しいなあ」
 大げさに首を振る透子に、透夜は少し笑う。
「そういえば、隣に挨拶したりしなくて良いのかな。結構どたばたやっちゃったけど」
 今さらな気もするが、透夜は隣に接する壁に目をやりながら尋ねた。
「大丈夫。下には昨日言ってあるし、隣、一つは空き部屋だから」
「もう一つは?」
「私の勉強部屋」
「透子の?」
 軽く目を見開く。
「うん、私の家って人が多いでしょ? おじいちゃんとおばあちゃんも一緒に住んでるし、ルーナもいるから勉強部屋が確保できなくって。空き部屋使わせてもらってるんだ」
 こっちの隣は1Kなんだよ、と、透子は笑った。

 コップの中の氷が溶けて無くなる頃、透夜はふと横の壁に視線をやった。キッチンのコルクボードに貼り付けられているのは、以前透夜の父が描いた子供の肖像だ。満面の笑みと味噌っ歯が独特の愛嬌をかもし出している。
「上手だよね」
 透夜の視線をたどった透子がテーブルの水を取り上げながら呟く。
「まあ、長く生きてると趣味でもそれなりの腕になるんだろうね」
「もしかして、題名あったりする?」
 二つのコップがお盆の上に並べられる。
「ないよ。単に、クレヨン」
「クレヨン? 鉛筆で描いてるよね?」
 テーブルの上に丸くついた水の跡を、台拭きが拭っていく。
「フランス語で鉛筆とかデッサンとか、そういう意味。日本語のクレヨンはフランス語ではパステル」
「へえ、そうだったんだ。教養が深まりました」
 透子は片手に台拭きを持って座ったまま、ぺこりと頭を下げた。
「透子が前にくれた色鉛筆にもクレヨンって書いてあったんだけどね」
「やだなあ。それ、何年前の話? 絶対読めてなかったよ私」
 透夜は透子へ視線を戻して笑った。
「あはは、そうかも」
 肘を膝に置いて頬杖をつく。
「まだ、とってあったりするんだけどね。引越しのとき部屋整理してたら出てきてさ。なんだか懐かしくなった。……もう、十年も前の話なんだよね」
 透子はどんな表情をすれば良いのかわからないみたいな無表情になって、視線を落とした。
「そうだね」
 お盆の上に台拭きを置いて、透子は立ち上がる。
「じゃあ、そろそろ戻ろうかな。今日は午後から部活なんだ」
「部活、何に入ってるの?」
 立ち上がった透子を見上げて尋ねると、透子は苦笑交じりに答えた。
「合唱。人数少ないんだけどね。今年から女声合唱になっちゃってさ」
「ふうん」
 楽しそうだね、と、透夜は目を細める。
「うん、楽しい。……あ」
 笑顔で腰を折ってお盆に手をかけた透子は、ふと動きを止めた。
「そだ。母さんに教えておくように言われてたんだ」
 透子はごそごそとジャージのポケットをあさり、深緑色のカバーがついた生徒手帳を取り出す。
「透夜、高校のこれからの予定ね。十日は始業式だけど十一日は入学式だから二年生は休み。十二日は八時四十五分登校」
 透夜は透子の言葉を聞きながらメモを取る。透子はそれを見ながらよしよし、と頷いた。
「それじゃ、またね」
 右手に持った手帳をポケットにしまい、改めてお盆を持ち上げる。扉の向こうへ透子を見送った透夜は、メモを自分の部屋に持って行くかどうしようか迷った末に、コルクボードに貼り付けた。
お題:戦争とむきだし 必須要素:右手 制限時間:15分 文字数:759字

 震える手で照準を合わせ、引き金を引いた。背後で彼も応戦しているのを感じた。乾いた跳弾の音。誰かが上げる断末魔の悲鳴。もう、襲いかかってきているのが敵か味方かすらもわからない。確かなのは、ただ背中を預けている彼の存在だけ。
 どうしてこんなことになってしまったのか、正直なところ今でも不思議に思う。ほんの一年前まで、私の暮らしている世界は平和だった。経済の動揺や、軍備の拡張、私のように魔術に秀でた子どもの保護……考えてみればそれらしい兆候はあったけれど、あの頃は戦争が始まるなんて私も私の周囲の子どもたちも考えてもみなかった。
 彼――私と背中合わせに戦っている彼と出会ったのもその頃だ。同じように魔術に秀でた存在として、同程度の実力を持つ彼と私は引き合わされて、パートナーとなった。その関係は今でも続いている。訓練用の銃が実弾を込めた実戦用の武器に変わり、扱う魔術も実験用から攻撃用に変わり、彼も私もずいぶんと人を殺すことに慣れてしまったけれど。
「リウ、このままここにいても埒が明かない。どうにか隙を見て移動する!」
 銃撃の騒音をついて、彼の怒鳴り声が聞こえた。
「了解!」
 私も精一杯声を張り上げて応え、彼が突破口を開く援護に回る。

 ややあって、彼の銃弾が敵の指揮官を捉えた。指揮系統が乱れ、隙が生じたのを見て、私たちは一気に戦場を駆け抜ける。敵の攻撃を、むきだしの殺意を、防弾装備と魔術の結界で跳ね返しながら。

 ついた先は戦闘地域から少し離れた、崩れ落ちた民家の影。彼は私の右手を取り、緊張で固まった右手の指を、一本一本銃から外していく。その手つきだけは、出会った頃から変わらずに優しい。
 私はこの手を頼りに、この先も戦場を渡って行くのだろう。彼と自分の右手を見つめながら、そんなことを思った。
お題:とてつもない俺 制限時間:15分 文字数:1124字

「何かとんでもないことをやってやるんだ」
 少年はそう言って、きらきらした瞳で私を見た。
「とんでもないこと?」
「うん。何かすっげーこと」
 この幼馴染みの少年と私は今までたくさんの秘密を共有してきたのだけれど、こんなに気合いの入った様子は初めて見る。
「見てろよ、俺、やるから!」
 そう言うと彼は駆けていった。

 もう、十年近く前の話だ。彼はあれからあまり変わっていない。軍役につくときも、大学へ進学したときも、彼は必ず「何かすごいことをやってやる」と言い放った。そして言葉通り軍隊で彼はエースパイロットになったし、大学では今まで誰も成果を上げていなかった分野で論文を発表して高く評価された。
 でも、彼は満足しない。
「お前にすごいって言われないと意味ないんだよ」
 大学から故郷に帰ってきた彼は、私を近所の喫茶店に呼び出して近況を報告した後、そう言った。
「俺、お前のためにがんばってるんだから」
 その台詞だけで充分すごいと私は思うのだけれど、思うだけで表情には出ていないのだろう。だから彼は満足してくれない。
「あんたはがんばってると思うよ」
「じゃあ、もっと褒めてくれ」
 幼馴染みは偉そうにふんぞり返りながら情けないことを言った。
「軍隊でも大学でも良い成績だったんでしょ?」
「そういうことじゃなくってさ」
 ではどういうことなのか。彼が私に何を求めているのかわからない。
「だーもう、どうしたらわかってくれるんだよ」
 頭を抱える彼を、私は困惑して見つめた。そんなこと言われてもわかるわけがない。
「すげーって言われたいわけ。小さい頃みたいにさ。きらきらした瞳で」
「きらきら……?」
 きらきら、していたのは彼の方だ。私はいつだってそれを見ていただけで、自分では何もできなかった。今だって……。
「お前がきらきらして見つめててくれれば、俺は何でもできるわけ」
 とてつもなく恥ずかしいことを言いながら、彼は真っ直ぐ私を見つめてくる。
「や、やめてよ……」
 思わず視線を逸らすけれど、彼は無理矢理こちらをのぞきこんできた。
「すげーって言ってよ」
「すごいって、思ってるよ、本当に」
 恥ずかしさを堪えて、どうにか彼の瞳を見つめ返す。紅茶色の瞳に、戸惑った表情の私が映る。
「本気で、言ってるよな?」
 彼の瞳がきらきらと輝きだした。
「うん」
 それが嬉しくて、私の頬が緩む。彼の瞳の中の私が微笑む。その笑顔は少しだけあの頃の幼い憧れを残していて、私は自分も変わっていないのだと気付いてしまう。
「本気だよ。私、あんたのそういうところ好きだから」
「やっと言ってくれた」
 私を見つめ返す彼は、心底嬉しそうに笑っていた。
お題:ナウい薔薇 必須要素:ペットボトル 制限時間:2時間 文字数:1582字

 カフェの窓際には、ペットボトルに入った薔薇が飾られていた。青紫色の小さな薔薇は、ペットボトルの狭い口からどうやって中に入り込んだのか、水に満たされたボトルの中で静かに浮かんでいる。窓から差し込んだ日差しに、その花びらは少し色褪せてしまっているようだった。
「これ……あれ?」
「あれって言われても……あれって何?」
 ケーキをつつきながら正面に座った青年に話しかけると、困惑した声が返ってきた。
「あの、どこかのお酒会社が開発した青い薔薇?」
「……そうかもね」
 ちらりとペットボトルに目をやった青年――志藤武弘はさほど興味もなさそうに頷いた。
「どうしてここに飾ってあるんだろう」
「さあ」
 会話が面倒くさいのか、志藤は短く言葉を切る。私は小さくため息をついて、ペットボトルをつまみ上げた。目線の先で水と薔薇がゆらゆらと揺れる。ちょうど浮力が釣り合っているのか、薔薇は浮かび上がることも沈むこともない。
「……綺麗だけど、ちょっと変な色」
「人工的に作られたんなら仕方ないんじゃない」
 ペットボトル越しに志藤を見つめる。切れ長の瞳はシルバーフレームの眼鏡の向こう。整った顔立ち。羨ましいくらい艶のある黒髪。半分くらいコーヒーが入ったカップを前に、自慢の彼氏は持参した文庫本に視線を落としている。志藤が読書家なのは知っていたし、本を読みながらだと会話がおろそかになることもよくわかっている。だから彼の返答がいちいちつっけんどんでも気にしたくはないのに。
 ――寂しい。
 放って置かれている、ような気分になる。一週間に一度のデートなのに。今日このカフェで待ち合わせてから、ほとんど会話らしい会話はしていない。
「ねえ、志藤」
「何?」
「今日、これからどうする?」
「行きたいところがあるなら付き合う。ないなら」
 ふと言葉を切って、青年が顔を上げた。
「本屋に寄って帰りたい」
「また本かー」
 思わずため息をついてしまう。駄目なのか、と、志藤の切れ長の瞳が問いかけてくる。
「いいよいいよ、付き合うよ。今日はどこの本屋?」
「駅前で良い。なんか疲れてそうだし、お前」
「……え?」
 言われて意味がわからなくて目を瞬かせる。
「試験、どうだったの」
 二日前に終わったばかりの大学の試験。今期は単位の上限を上げてもらったから、レポートもテストもたくさんあって大変だった。でもそのことは志藤に言っていない。
「どうって……まあ、普通に終わったけど」
「……悪かったと思ってる。気晴らしとか、付き合えなくて」
 何か。
 何かとんでもなく珍しいことが起こっている気がする。どういう風の吹き回しなのだろう。
「志藤、何か悪いものでも食べた?」
 問いかけると、志藤は気まずげに眼鏡の位置を直し、本に目を落とした。
「いや。たまには……と、思って」
 自分でもらしくないことを言っている自覚はあるのだろう。志藤の頬が微かに紅潮する。
「ありがとう」
 こんなことくらいでこんなにも嬉しくて、会話の素っ気なさも本ばかり見ている態度の悪さも全部許せてしまう。
 私はまたペットボトルの薔薇に視線を戻した。水の中に浮かぶ青い薔薇。
「これが置いてあるの、涼しげだからかな」
「もう冬だけど」
 あっという間にいつもの素っ気なさを取り戻してしまった志藤が言う。
「ねえ、早くコーヒー飲んじゃいなよ」
「行きたいところでも思いついたの?」
「うん、花屋さん」
 志藤が本から目線を上げて、私をじっと見つめた。何のために、と、その瞳が言っている。
「青い薔薇、見てみたくなっちゃった」
「売ってるかなあ」
「見るだけ見てみようよ」
「いいけど」
「じゃ、決まり」
 私は機嫌良くケーキの最後のひとかけらを志藤に差し出した。
 志藤は一つ頷くと、素直にケーキを食べてくれた。
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